いつもの帰り道。

乾先輩に好きだと言われた。






  『 僕ノ知ラナイ 本当ノ 僕ノ気持チ 』







乾先輩にはずっと自主トレのメニューを作ってもらっていて、
気付いたら、一緒に自主トレするようになっていた。

最近では俺のブーメランスネイク完成の為にダブルスまで組んでくれて。





そして、ある日の帰り道。

 「好きだ」と言われた。





驚く暇もなく抱きしめられて、キスされた。





けれど、あれから先輩は何も言ってこない。




あの告白も。

あのキスも。

全て嘘だったのだろうかと思えるほどに。













 「乾先輩、ラケットの振り方見てもらってもいいですか?」
 「あぁ、構わないよ。一度振ってみてごらん。」


 「乾、ちょっと練習メニューを見てもらいたいんだが?」
 「わかった。すぐ行くよ。」





先輩は案外と周りから頼られやすいタイプのようで
部活中、一番多く名前を聞く事を最近知った。



手塚部長や大石副部長、竜崎先生もそうだけれど
1年の奴らまで何かあると乾先輩に相談をしている。




誰かが乾先輩の名前を呼ぶたびに
俺はなぜかイライラして、ムカついていた。






今日だってそうだ。

俺のブーメランスネイクの完成具合を見たいからラリーをしようと言ってきたのは乾先輩の方。






なのに。






 「乾!ちょっといいか!?」

手塚部長に呼ばれた乾先輩が軽く片手を上げて合図を送った。





 「ごめんね、海堂・・・・。」
 「うるせぇ。サッサと行けよ。」





ムカつく。




ムカつく。






俺より他の奴を優先する先輩がムカつく。

俺じゃない奴のところへ行こうとする先輩がムカつく。





けれど、申し訳なさげに俺に背を向けた先輩の後姿を見送っていたら
なんだか急に不安になって、目の前がぼやけてきた。



もしかすると、先輩は後悔しているのかもしれない。

俺みたいな奴に好きだなんて言ってしまった事。
抱きしめて、キスしてしまった事。





本当は後悔しているのかもしれない。




そう思うとやりきれなくて、涙が溢れてきた。



その瞬間、先輩がふとこちらを振り返った。

慌てて逸らそうとしたけれど、間に合わずに目が合う。








 「――――っ!?海堂・・・!?」

先輩に呼ばれるのと同時に俺は下を向いたままコートを飛び出した。





勢いよく撥ね退けたフェンスがガシャン、と大きな音を立てる。





 「海堂!!」

先輩の声に他の奴らがこちらを気にしているのがわかったけれど
止まるわけにはいかない。




こんなくだらない事で泣いたなんて、誰にも知られたくなかった。













 「離せっ!」
 「海堂?!どうしたんだ!?」



思わず部室に駆け込んでしまった俺のすぐ後に乾先輩も部室へ飛び込んできた。




 「なんでもねぇよ、離せっ!!!!」
 「落ち着け、海堂!!」



俺は両腕を掴む先輩の腕を振り払おうと躍起になる。





 「アンタばっかり平然としやがって・・・。」

先輩の胸をドンドンと叩く。

 「ムカつくっ!!!」




最後に思いっきり殴ってやろうと思ったけれど、体が動かなかった。






 「海堂・・・・・。」


耳元で聞こえる先輩の声。




子供をあやすように、トントントンと背中を軽く叩かれて

俺は先輩に抱きしめられている事に気付いた。






なぜか急に心が落ち着いた。





 「どうしたんだ、海堂?」
 「アンタが好きだなんて言うから・・・。」
 「・・・。」
 「抱きしめたりするから・・・。」
 「・・・。」
 「キス、・・・なんてする・・から・・・。」
 「海堂・・・?」




止まっていたはずの涙がまた溢れてくる。






 「俺はどんどん自分を嫌いになる。」






 「アンタの事ばっかり気になって、
くだらねぇ事でヤキモチ妬いて・・・・。」







ムカつくのは。

先輩に対してじゃない。





 「先輩なんか、大嫌いだ・・・。」







ムカつくのは。

気持ちを素直に表現できない自分に対して。







けれど乾先輩は。



 「俺は大好きだよ、海堂の事。」



と、優しく髪を撫でてくれる。







 「俺は・・・・嫌いだ。」

 「でも俺は大好き。」







そっと体を離されて、顔をあげたら先輩の影が降りてきた。


そして、2度目のキス。






 「海堂が大好きだよ。」

 「・・・・・・・・。」






柔らかく微笑まれる。

俺は言葉が見つからなくて、先輩の背中に両腕を回して胸に顔を埋めた。







この人には絶対に敵わない







本当は。

好きだと言われる前からずっと。

先輩の事が好きだったのだと

この人にやっと今、気が付かされた。








= END =



幸さんのサイトでめでたくキリ番踏んづけて、
図々しくもリクさせて頂きました!!
か、薫が可愛すぎvv
貞治ってば!わかってあげてよ、乙女心を!
でも包容力溢れる貞治にドキドキですv
幸さん、本当にありがとうございました!!









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